一度使ったらもうリアル本に戻れない Kindle Paperwhite - 書店は無くなってしまう運命なのですね・・・
Kindle Paperwhite を購入した。
数年前から小さな書店はどんどん減っているらしい。確かに帰り道の商店街にあった2軒の本屋さんはいつの間にか無くなってしまった。
いつ無くなったのかさえ記憶に無いほどだ。以前は家への帰りに必ず立ち寄っていたのだが、いつのまにか自分にとって大切な店舗ではなくなってしまった。
随分前から書店では買わなくなっていた
本は年に100冊程度読む。もっとも、時間の都合で精読するのは30冊程度でしかない。
あっという間に本棚がいっぱいになるので定期的に古本屋に本を持ち込んで買い取ってもらう。意外と手間だ。買取金額は購入額の一割にも満たない。本を売ったところでたいした金額にはならないので捨ててしまってもいいのだが、人様の書いた作品をゴミに出すのは何となく申し訳なく思う。この辺の感覚はあまり合理的ではないと自分でも思う。
3年ほど前までは大型書店に最低でも週一度ぐらいは行っていた。
平積みの新刊本をじっくりと見渡し目次とあとがきをざっと斜め読みする。気になる本があるとメモをする。書店には気の毒だがAmazonで購入するためのメモだ。
ところが最近はリアル書店での平積みチェックもしなくなってしまった。おそらく今年になってから一回も書店には行っていない気がする。
Amazonで買う理由
自分が本をAmazonで買う理由は3つほどある。
- 読書録および重複購入の防止
- 同一ジャンル本のレコメンドや検索機能
- カスタマーレビュー
再読することは無いだろうと感じた本は古本屋に売却してしまう。まして、その手の本は斜め読みすることが多いので、本のタイトルや装丁とその内容が結びついて記憶されていない。したがって、気をつけないと同じ本を買ってしまうことがある。
その点、購入履歴が残るAmazonは楽だ。いつからか定かではないが、一度買った商品については注文状況に関するアラートがヘッダに表示されるようになっている。これなら、重複購入してしまうことはまずない。
自分が詳しくない分野の本を読む場合、違う著者のものを短い期間に3冊程度まとめて読むことにしている。そんな時に、レコメンド機能や検索機能は非常に便利だ。
買おうかどうか迷った時には、カスタマーレビューもそれなりに参考になる。
別にAmazonの宣伝をする気はさらさらない。ただ、これらの機能が自分にはとても便利なのだ。
改めて言うまでもなく、書店という業態に激しい逆風が吹いていることは事実だ。
Kindle Paperwhite の衝撃
Kindle の購入については、日本での発売直後から買うかどうか悩んでいた。買うとしたら Paperwhite にしようと漠然と思っていた。
購入をためらっていた理由は大きく2つだ。
以前iPad で電子書籍を読んだ際に眼が非常に疲れたため電子ブックリーダーに対して良い印象が無かったこと、そして読みたい本があまりKindle化されていないことだ。
実際に Kindle Paperwhite を使用してみると、リアルな本を読むのと比べても眼の疲れはほとんど感じない。むしろ室内の光源の状態によっては、Kindle の方が読むのが楽な気もする。また、ハードカバー本に比べればKindle の方が軽くてサイズも小さいので腕が疲れない。しかも、ページをめくるのに片手で良いのが嬉しい。
購入を悩んでいた時間がもったいなく思えるほどの衝撃だ。
一度使ったらもうリアル本に戻れないハイライトとメモ機能
もうリアル本に戻れないと思った最大の決め手がハイライトとメモ機能だ。
もともと、気になる記述があると、細い付箋紙をペタペタ貼ったり、本の下側を三角に折るようにしている。あとで再読したくなった際に、必要な部分だけ飛ばし読みするためだ。
Kindle に限らず、一般的な電子ブックリーダーはブックマークや下線を引いたりハイライトすることができる。
重要な文章や気になる部分をハイライトしたりメモを追加しておく。メニューから「メモ・ブックマークを表示」を選ぶと、メモやブックマークに加えてハイライトした部分が本の冒頭から順番に一覧表示される。再読する際には本をめくらず、これを読めば良いのだ。
非常に便利で合理的だ。
今のところの弱点
Kindle化された書籍数がまだまだ少ない。
実際、60冊余りある「ほしい物リスト」に登録していた本のうち、Kindle化されていたのは、たったの3冊だった。これは残念である。
先行している米国では既に昨年の段階で、電子書籍の売り上げがハードカバー本の売上を超えている。出版社にもいろいろな都合があるのだろうが、日本においても、ハードカバーのみの出版より電子書籍化を同時にした方が確実に売り上げは伸びるだろう。今年から来年にかけて、おそらく日本でも売り上げの逆転現象が起こるに違いない。
実際のところ、よほど必要に迫られない限り印刷本を買う気が無くなってしまった。現状では「ほしい物リスト」を放置して、Kindle化されたものから読みたい本を探すようになってしまっている。なにしろ本棚のスペースを心配しなくて良いし、ストレス無く読むことができ、再読する際にも便利だからだ。
印刷本とリアル書店の今後はどうなるのだろうか
つきなみな表現ではあるが、印刷本とリアル書店は今後ますます淘汰の波にさらされていくのだろう。
正直に言って門外漢である自分には良くわからないが、電子出版物では用をなさない類の書籍のみが今までよりもより高い値付けをされて売られていくのだろうと思う。
例えば絵画集や、受験や資格試験の過去問集などがそれにあたるのだろうか。学校などで使うテキストなどもしばらくの間は紙ベースなのだろう。コンビニで販売されていない趣味性の高い定期刊行物などもそうかもしれない。
しかし、それだけでは十分な売り上げを確保するのは難しそうだ。
付加価値の創造がしにくい流通業界はいずれの分野においても厳しい状況に追い込まれつつあり、書店についてもこの波からは逃れられないし、また書店は新たな付加価値の創造が極めて難しそうな業態にみえる。
編集者で選ぶ時代が来るかもしれない
作家にとっては昨今の流れは朗報なのだろう。今までは売り上げ見込みが立たずに出版できなかった作品が、電子出版なら世に出すことができるようになるだろうからだ。
ところが読者側にしてみると、商業的見地から厳しいチェックをしてきた編集者の目を通らない出版物が増えるとなると、良書を探す努力がより大変になってしまう。
出版社がこれまで行なってきた出版するか否かの選考や編集などの業務は、読者にとっても大きなメリットを提供している付加価値生産だ。出版社の名前を見れば、ある程度はその書籍のクオリティがわかるわけで、このクオリティを維持する努力を続ける出版社は印刷本が廃れたとしても、しっかりと収益を確保できるはずだ。
将来的には、作者でも出版社名でもなく、編集者の名前で簡単に本を探せるようになると、自分が見向きもしなかった新しい作家に出会えることにもなるので面白いだろうと思っている。