指示された通りにキッチリやるシステム開発屋さんが嫌い
指示された通りにキッチリやるシステム開発屋は嫌いだ。
キッチリやってくれるんだから文句をつけてはいけないのだが、声を大にして言おう。
「大嫌いだ!」
今年になって立て続けに2件のプロジェクトマネジメント業務を依頼された。依頼主はいずれもそこそこ大手の金融機関で中規模なウェブシステムの開発案件だ。
どちらもRFP(Request For Proposal)が作成された後の段階から関わることになった。
いろいろ疲れたサラリーマンSIerさん
どちらのプロジェクトも開発業者は既存の仕組みを作ってきた業者に決まっている。それ自体は別に珍しいことではない。逆に既にできあがった発注元と業者の間に、ある日突然自分のような外部の人間がPMとして入ることの方がよほど珍しい。
大手の金融機関はシステム部門がさらにその配下に子会社を持っている場合が多い。子会社の業務はメンテナンス中心で、開発案件はさらにそこから下請けに出されることになる。その下請けも実は誰でも知っているような大企業で、さらにそこから孫請けが・・・、という感じで、大手デベロッパーとゼネコンのような構造になっているわけだ。
結果的に開発の現場で何が起こっているかというと、現場をよくわかっていないシステム部門の担当者と、簡単なスクリプト程度しか書いたことのない元請業者の担当者が、現業から要求された通りの内容に基づいてシステムを作っていくことになる。
余計なことをして怒られた事があるに違いない
システムを必要としている現場と、実際にコードを書いている孫請けとの中間にいる彼ら、すなわちシステム部門の担当者と元請けの担当者は、大変良く飼いならされている。
きっと駆け出しの頃に、気を利かせて要件定義に入っていない便利機能とかを作って、褒められると思っていたのに「余計な事をするんじゃない!」と怒られ心が折れた経験があるに違いない。
要求に対して、きっちり100%の仕組みを作ってくることについては、本当にスゴイし、その部分については尊敬する。でも、それでは報われない。
システムを欲した現場からは「使い勝手が悪い」と罵られ、直接コードを書いている孫請けや曾孫請けからは「もうちょっとクールなやり方あるのに、いまどきコレでいいワケ?」と嘲られるのだ。
かわいそうだ。
伝言ゲームはやめるべき
現場のプレイヤーたちは、システムのことなんか良くわからないのが普通だ。「あれがしたい」、「これができたらいいのに」といった体系化されていないニーズがあるだけだ。
それをシステム部門が整理して、長期にわたって責任を取ることのできる立派なシステム屋さんに発注し、下請けが制作する。
一見して理にかなった分業に見えるが、システムを制作するチームとそれを使用する現場が遠すぎて、それで本当に必要とされてるものができるわけがない。
開発にあたっては、現場と制作チームが同席し直接意見を交換できる場を何回も持つべきだ。そこにおいては、システム部門の役割は、難解なIT用語を社内向けに理解できる言葉に翻訳したり進捗管理などのコーディネーションに徹するべきだし、元請業者は適切な能力をもったプログラマーをアポイントしたりハードやミドルウェアを調達するブローカー業務に徹するべきだ。
現場が「こうしたい」と言った時に期待している返事は、「できます」とか「無理です」といった単純な回答ではないはずだ。「そうするよりも、こうしたほうが、あんな事やこんな事ができますよ」といった提案が欲しいはずだ。
そういう生産的な関係をつくれなくなってしまった結果として、現場がシステム部門や元請け業者に不信感を持つことになり、外部からPMを招聘し屋上屋を架すような情けないことになってしまったようだ。
落ち着いてよくよく考えてみれば、こういった非生産的な伝言ゲームが行われているために、お陰様で自分にもお仕事が頂けたわけで、引き続き現状ママで平常運転して頂きたいと切にお願い申し上げます。